定期的に受けていますか?予防歯科の必要性

歯や歯茎の病気は予防が可能

日本では歳をとると歯が弱くなってしまうのは仕方がないとか、女性は妊娠するたびに歯が弱くなるといわれていた時代もありました。年齢を重ねると共に歯を失ってしまう人がとても多かったからです。ところが、歯が弱くなってしまうのは加齢による要因だけではありません。
抜歯の主な原因の割合を調べてみると、もっとも多いのが“歯周病”で、続いて“虫歯”となっています(8020推進財団;2005)。この2大要因を合わせると全体の75%にもなり、非常に多くの人が歯や歯茎の病気によって歯を失っているのが現状です。

重要なことは、こうした歯や歯茎の病気は生活習慣病と同じで、十分に気をつけていれば多くの場合で予防ができるということです。今回は歯を守る予防歯科の必要性について解説します。

元気な歯は健康長寿の礎

今、『8020運動』という国の健康キャンペーンが行われていることをご存知ですか?『8020運動』というのは「80歳になっても20本以上の歯を残そう」というのが目標で、歯や歯茎の健康を守る予防ケアの必要性が呼びかけられています。
このようなキャンペーンが始まったきっかけには、健康で長生きするためには歯がとても大切だと考えられていることがあります。
まず、歯を失って困ることといえば食事でしょう。硬い食べ物ほど食べるために多くの歯が必要となり、例えばレンコンや豚肉では6本~17本、もっと硬いフランスパンや酢だこを食べるためには18本以上の歯が必要だとされています。

食べられる物が減って柔らかい食べ物の割合が増えていくと、栄養が偏ってしまう可能性があります。特に、肉類が食べられなくなるとタンパク質が不足して、高齢者では衰弱が心配されます。
ですから、少なくとも20本の歯があればいろいろな食べ物を美味しく食べられるということで、80歳で20本が目標に掲げられるようになったということです。

また、最近、歯を失う原因の第1位である“歯周病”と、生活習慣病の関係性が明らかになってきました。歯周病は細菌に感染することで歯茎に主な症状が出る病気ですが、その影響は歯茎だけには留まらず、細菌が血管を介して各臓器に伝播していくことでさまざま病気のリスクを高めてしまいます。
例えば、歯周病原菌が歯茎から血管に進入すると、血管の内壁を壊して動脈硬化を引き起こすことがあります。動脈硬化は心筋梗塞や心臓発作などのリスクを高めます。さらに、歯周病に感染して炎症が続くとインスリンの抵抗性を高め、糖尿病を悪化させることもあります。

さらに、歯を多く失うと認知症になりやすくなるという報告もあります。実は歯はあらゆる面で私たちの健康長寿ととても深いかかわりを持っているのです。

歯を守る予防歯科

それでは、どのように予防していけば“歯周病”や“虫歯”を予防して、元気な歯を維持していくことができるのでしょうか。
歯の健康を維持するためには、「予防歯科」がとても効果的です。予防歯科は名前の通り、歯の病気を予防することが目的ですが、主に定期検診とPMTCを行います。

  • 定期検診

    歯科医師が虫歯や歯周病がないかを確認します。自覚症状が現れる前の虫歯や歯周病を早い段階で発見できるかもしれません。

  • 歯磨き指導

    磨き残しがある場所から歯磨きが苦手な場所を判断して、上手な磨き方をお伝えします。

  • PMTC

    歯垢(プラーク)や歯石を専用の道具で取り除きます。さらに虫歯を予防する効果があるフッ素を歯に塗布します。

もちろん、デンタルケアの基本としてご家庭での歯磨きは欠かすことができないことですから、ご家庭でのセルフケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアを組み合わせて継続していくことがおすすめの方法です。定期検診で歯の状態を見てもらうことで、セルフケアのよくできているポイントと不十分なポイントも指摘してもらえるということも非常に意義深いものです。

成果があらわれ始めている予防歯科

日本は医療技術が進んでいるといわれていますが、実は世界的に見て高齢者の歯がたくさん残っているというわけではありません。これは、これまで予防歯科の考え方が欧米に比べて十分普及してこなかったことが一因だと考えられます。
それでも徐々に予防歯科を受ける人が増えてきた結果、『8020運動』を達成している人の割合は平成17年のおよそ25%から、平成28年の調査では半数近くまで上昇してきました。これはとても画期的なことです。

子どもの虫歯も大幅に減少してきているなど、予防歯科の成果は徐々にあらわれ始めてきていますが、それでもまだ道の途上です。
大人になってから歯医者の定期検診を受けたことがないという人も、「健康管理は口からはじまる」ということをよく理解して、定期検診やPMTCを積極的に活用していただければと思います。「予防歯科を受けたい」という旨をお気軽にご相談ください。